本日は開館しております(10:00-18:00)

タマシュ・ヴァリツキー《二眼レフカメラ》〈想像のカメラ〉より、2017/ 2018年、コンピュータ・グラフィック 作家蔵


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B1F 展示室

イメージ・メイキングを分解する

2022.8.910.10月・祝

  • 開催期間:2022年8月9日10月10日月・祝
  • 休館日:毎週月曜日(月曜日が祝休日の場合は開館し、翌平日休館)
  • 料金:一般 700(560)円/学生 560(440)円/中高生・65歳以上 350(280)円 ※( )は当館の映画鑑賞券ご提示者、各種カード会員割引料金。各種割引の詳細はご利用案内をご参照ください。各種割引の併用はできません。 ※小学生以下、都内在住・在学の中学生および障害者手帳をお持ちの方とその介護者(2名まで)、年間パスポートご提示者は無料。※10/1は「都民の日」のため無料

本展はオンラインによる日時指定予約を推奨いたします。

日時指定予約Webketページ(外部サイト)

絵画、写真、映画、テレビ等の視覚表現や、脳内で見る夢や言葉にならない曖昧な印象、そして目に見えるものから心の中に浮かんだことまでを、イメージという語で指し示すことができます。このようなイメージに形を与えることを、本展では「イメージ・メイキング(image-making)」と呼びます。
科学的探究心と技術の発展により、光学を利用したイメージ・メイキングが飛躍的に進化したことで、人間の視覚を正確に再現するだけでなく、本来肉眼では見ることはできないイメージまで作り出すことが可能になりました。このことは、多くの芸術家たちに刺激を与え、視覚的表現の可能性を拡げた一方で、技術的なルールを課すことにもなりました。
本展では、東京都写真美術館の収蔵資料であるイメージ・メイキングのための装置や機器の展覧を通して、その一様ではない技術や原理を紹介するとともに、イメージ・メイキングの技術の仕組みや道具に注目し、分解したり要素を組み替えたりしながら、標準化されたイメージへの批評を加えて、イメージ・メイキングを新たなものとして再発明してきた作家たちの作品を紹介します。
イメージには実体があるわけではありません。イメージは、作家が制作した作品やコンピュータや映像装置から出力された場所を支持体にして、その形を変えながら広く伝わっていきます。そして、視覚を通じて外的なイメージを認識するだけでなく、想像力によって内的にイメージする私たちも、イメージの担い手なのです。

【TOPMUSEUM Podcast】
本展出品作家の藤幡正樹さんと気鋭の研究者・原島大輔さん(基礎情報学/表象文化論)をお迎えして、テクノロジーやイメージ・メイキングについて深く切り込んだトークをしていただきました。Spotify、Apple Podcast、Google Podcastsからご視聴いただけます。
イメージ・メイキングを分解する展
前編:Spotify Apple Podcast Google Podcasts
後編:Spotify Apple Podcast Google Podcasts

藤幡正樹| 1956年、東京生まれ。メディア・アーティスト。80年代は主にCGを扱った作品の制作、90年代はインターネットやGPSなどの先端テクノロジーに取り組む。96年には《Global Interior Project #2》でアルス・エレクトロニカのゴールデン・ニカを受賞。インタラクティヴな書物をテーマにした《Beyond Pages》は1995年以降世界数十ヶ所で展示された。1992年の《生け捕られた速度》から2012年の《Voices of Aliveness》へと続く「Field-Works」シリーズでは動画にGPSによる位置情報を付加することで仮想空間と現実空間をつなぎ、記録と記憶の新しい可能性を多数の作品群へと展開。2016年には、70年代から現在までの主要作品をARで見ることのできるアーカイヴ本『anarchive #6 Masaki Fujihata』をフランスで出版。最新プロジェクトは、残された写真を参照しつつその時代の人々の営みをARを用いて現在に再現するもので、2018年の香港での《BeHere HongKong》(企画:osage art foundation)に続いて、1942年に起きた日系人強制収容をテーマとする《BeHere /1942》 が、2022年全米日系人博物館で発表された。

原島大輔| 1984年生まれ。早稲田大学次世代ロボット研究機構研究助手。専門は基礎情報学、表象文化論。著書に『AI時代の「自律性」未来の礎となる概念を再構築する』(共著、勁草書房、2019年)、『基礎情報学のフロンティア人工知能は自分の世界を生きられるか?』(共著、東京大学出版会、2018年)。訳書にユク・ホイ著『再帰性と偶然性』(青土社 2022年)など。


展覧会の構成
1 映像装置:多種多様なイメージングの装置
人間はこれまで多種多様なイメージ・メイキングを試みてきました。ここでは、その痕跡であるさまざまな映像装置とその原理を紹介します。光学的なイメージ・メイキングの道具である「カメラ・ルシーダ」、動いていないものを動いて見せる仮現運動を利用した「ゾートロープ」、20世紀初めに制作された35ミリフィルム映写機などを展示します。

第1章映像資料
左上から: キノーラ(レンズつき、イギリス製) [参考図版]、ゾートロープ、カメラ・ルシーダ、35㎜フィルムプロジェクター兼マジックランタン すべて東京都写真美術館蔵

2 アート・エクス・マキナ:コンピュータによる「美」の分解
〈Art Ex Machina〉(アート・エクス・マキナ)は、ジル・ゲールブランドによって1972年に出版された版画のポートフォリオです。コンピュータでイメージ・メイキングした6名の作家は、いずれも1960年代からコンピュータ・グラフィックスに取り組んだパイオニアたちであり、今日のジェネラティヴ・アートの先駆けともいえます。作家のうち、ゲオルク・ネース、フリーダー・ナーケ、川野洋らは、哲学者・美学者であるマックス・ベンゼの「情報美学」の影響を受けていました。彼らにとって、ときにコンピュータは、単なる作品制作のための道具ではなく、「美」を分析するための道具でもありました。

第2章図版1アートエックスマキナ
左から フリーダー・ナーケ《無題(ウォークスルー・ラスター)》、川野洋《無題 (Red Tree)》 いずれも〈Art Ex Machina〉より 1972年 シルクスリーン 個人蔵  ©Gilles Gheerbrant 1972/2022

第2章図版2アートエクスマキナ
ゲオルク・ネース《無題》〈Art Ex Machina〉より 1972年 シルクスリーン 個人蔵 © Gilles Gheerbrant 1972/2022

3 木本圭子:描出の身体とアルゴリズム
木本の作品は、数理アルゴリズムによってコンピュータの座標上に置かれた点群の軌道(attractor)やその座標自体を、自動的に変化させます。この操作を何度も繰り返して、結果を組み合わせることで、時間によって変化する点群を生成します。これをディスプレイ上に表示させることで、人間にとって視覚的な情報であるイメージが描出されるのです。 子供の頃から絵を描くのが好きで、美大を卒業した経歴からは、のちに木本がこのような「非線形数理」を使った作品を制作するとは、考えにくいのではないでしょうか。しかしパーソナル・コンピュータの登場を契機に、木本は数学を使った作品に取り組みはじめることとなります。緊張しながら手を動かし、いかに気持ちの良い描線を描けるか。演算によっていとも簡単に美しい線や絵を描けるコンピュータの存在は、木本にとってこういった描画の行為にあったはずの身体的な緊張感や、できた時の感動を揺るがすものでした。その後、木本が作品で追及したのは、コンピュータの背後にある抽象的な数学の基礎に、身体感覚との接点を見いだすことでした。

第3章図版1木本圭子
木本圭子《Imaginary・Numbers》2012年 印画紙出力 作家蔵

第3章図版2木本圭子
木本圭子《INSIDE》2009年 シングルチャンネル・ヴィデオ 東京都写真美術館蔵

4 藤幡正樹:非・光学のイメージ生成 
この《ルスカの部屋》という作品は、レンズで光を集める代わりに、光に対象物を走査させています。基本原理は走査型電子顕微鏡と同じで、対象にレーザーを当て、その反射光の量とピクセルの位置を同期させて画像を生成するものです。 本作は、ビデオや印刷で使用される視覚技術「画像走査(Scanning)」を用いて、部屋という大きな空間のなかでその再現を試みています。その体験は、写真によって目が馴らされてしまった私たちの視覚認識とはまったく異なるイメージ・メイキングを実現するのです。

第4章図版1藤幡正樹

第4章図版2藤幡正樹
藤幡正樹《ルスカの部屋》2004/2022年 インスタレーション [参考図版] 東京都写真美術館蔵

5 タマシュ・ヴァリツキー:あり得たかもしれないイメージ・メイキング
タマシュ・ヴァリツキーは、カメラ好きの父親の影響で映像機器に囲まれて育ち、また若い頃からコンピュータにも親しんできました。その影響もあり、ヴァリツキーはメーカーが製造する機材を、標準的・一般的な使い方をするだけでなく、そのテクノロジーを分解して分析し、作品を制作してきました。ヴァリツキーの作品群は、カメラをはじめとする機械を通して作られた私たちの「普通の」視覚体験を問うようなものなのです。本展では、第58回ヴェネチア・ビエンナーレ(2019年、ハンガリー館)出品作品で、19世紀に開花した数々の視覚・光学装置をベースに「あり得たかもしれない」想像上の映像機器をデザインし、コンピュータ・グラフィックで提示した〈想像のカメラ〉シリーズのほか、作家のこれまでの代表作を展示します。

第5章図版1タマシュヴァリツキー
タマシュ・ヴァリツキー 《ゾートロープ・カメラ》〈想像のカメラ〉より 2017/ 2018年 コンピュータ・グラフィック 作家蔵

第5章図版2タマシュヴァリツキー
タマシュ・ヴァリツキー《ザ・ガーデン(21世紀のアマチュア映画)》1992年 シングルチャンネル・ヴィデオ 作家蔵

第5章図版3タマシュヴァリツキー
タマシュ・ヴァリツキー《グラモフォン》〈機械たち〉より 1989年 コンピュータ・グラフィック 作家蔵

※事業は諸般の事情により変更することがございます。 あらかじめご了承ください。

主催:東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都写真美術館、日本経済新聞社
助成:公益財団法人吉野石膏美術振興財団

関連イベント

作家とゲストによるトーク【第1回】
2022年8月11日(木・祝) 18:00~19:30  終了致しました
登壇者|タマシュ・ヴァリツキー(本展出品作家)、白井雅人(上武大学教授)
会 場|東京都写真美術館 1Fホール
定 員|190名
※当日10時より1階総合受付にて整理券を配布します(お一人様につき2枚まで)。番号順入場、自由席。
※ご来館予定のお客様は、新型コロナ感染症拡大防止の取り組みにご理解とご協力をお願いいたします。
※諸般の事情により事業は変更する場合がございます。あらかじめご了承ください。

タマシュ・ヴァリツキー|
ニューメディア・アーティスト。1959年ハンガリー、ブダペスト生まれ。9歳で初めてアニメーションを創作。その後、画家、イラストレーター、写真家として活動し、1983年からコンピューターを使った制作を開始。1989年、 アルス・エレクトロニカ(オーストリア)で“コンピューター界のオスカー”と称されるゴールデン・ニカ大賞を受賞。2019年の第58回ヴェネツィア・ビエンナーレにてハンガリー代表に選出された。

白井雅人|
上武大学教授。NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]学芸員、山形県立米沢女子短期大学、成安造形大学勤務を経て現職。専門は芸術表現論、メディアアート。著書に『メディアアートの教科書』(フィルムアート社、2008年 共編著)など。1996年タマシュ・ヴァリツキー「トリロジー」展(NTT/ICCギャラリー)を手掛ける。
作家とゲストによるトーク【第2回】
2022年9月23日(金・祝) 18:00~19:30  終了致しました
登壇者|木本圭子(本展出品作家)、木原民雄(メディアアーティスト/メディアデザイン研究者)、四方幸子(キュレーター/批評家)
会 場|東京都写真美術館 1Fスタジオ
定 員|30名
※当日16時より1階総合受付にて整理券を配布します(お一人様につき2枚まで)。番号順入場、自由席。
※ご来館予定のお客様は、新型コロナ感染症拡大防止の取り組みにご理解とご協力をお願いいたします。
※諸般の事情により事業は変更する場合がございます。あらかじめご了承ください。

木本圭子|
1980年代から独学で数理的手法による造形を始め、2000年前後よりさらに動的表現を探る研究および制作を開始。2003年『イマジナリー・ナンバーズ』 (工作舎)を発表、以降精緻な平面作品も展開する。合原複雑数理モデルプロジェクト(2005–2008年)、合原最先端数理モデルプロジェクト(2010–2013年)などの学術プロジェクトにも参加。2006年、平成18 年度文化庁メディア芸術祭アート部門大賞受賞。東京都写真美術館、東京都現代美術館、ミラノサローネ・レクサス館など国内外で作品発表を行う。主要な動画作品が東京都写真美術館に収蔵されている。

木原民雄|
本展展示協力。メディアアーティスト、メディアデザイン研究者。NTTで研究開発に従事し、サービス企画や研究戦略にも携わったほか、東京大学先端科学技術研究センター協力研究員などを併任。2022年度よりデジタルハリウッド大学教授、大学院研究科長。メディアアーティストとしてNTT/ICC、Ars Electronica Festival、メディア芸術祭愛知展などに出展。展覧会の企画、監修、展示協力などに関わり続ける。博士(情報理工学)。

四方幸子|
キュレーター、批評家。オープンスペース2008《多義の森》(NTT ICC)、《velvet order (柔らかい秩序) 2016 autumn sunlight》(KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭)などで、木本圭子の作品展示を手がける。「対話と創造の森」アーティスティックディレクター。多摩美術大学・東京造形大学客員教授、武蔵野美術大学・情報科学芸術大学院大学(IAMAS)・國學院大学大学院非常勤講師。美術批評家連盟会長。
担当学芸員によるギャラリー・トーク
2022年9月27日(火) 14:00~(40分程度)  終了致しました
会場|東京都写真美術館 地下1階展示室内
定員|15名(先着順)
参加費|無料(要チケット提示)
※13:30より地下1階展示室前で申込受付開始。定員に達し次第、受付を終了します。
※当日有効の「イメージ・メイキングを分解する」展チケットまたは展覧会無料対象の方は各種証明書等のご提示が必要です。
※本イベントは無線ガイドシステムを使用します。
※感染状況により中止となる場合がございます。あらかじめご了承ください。

同日16:00から「見るは触れる 日本の新進作家 vol.19」展ギャラリー・トークを開催します。

展覧会図録

イメージ・メイキングを分解する
出品作品図版、作家ステートメント、作家インタビュー、多田かおり(東京都写真美術館学芸員)によるテキストなど。体裁:B4判変型、166 ページ 発行元:東京都写真美術館 価格2,900 円(税込)

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