本日は開館しております(10:00-20:00)
ネグレッティ&ザンブラ《クリスタル・パレス》
ネグレッティ&ザンブラ社《クリスタル・パレス》1854年頃 ダゲレオタイプ 東京都写真美術館蔵
3F 展示室

TOPコレクション 何が見える?

「覗き見る」まなざしの系譜

2023.7.1910.15

  • 開催期間:2023年7月19日10月15日
  • 休館日:毎週月曜日(月曜日が祝休日の場合は開館し、翌平日休館)
  • 料金:一般 700(560)円/学生 560(440)円/中高生・65歳以上 350(280)円  ※( )は有料入場者20名以上の団体、当館の映画鑑賞券ご提示者、各種カード会員割引料金 / 小学生以下、都内在住・在学の中学生および障害者手帳をお持ちの方とその介護者(2名まで)年間パスポートご提示者は無料/第3水曜日は65歳以上無料/ 7月20日(木)- 8月31日(木)の木・金17:00-21:00はサマーナイトミュージアム割引(学生・中高生無料/一般・65歳以上は団体料金)※各種割引の併用はできません。

本展はオンラインで日時指定チケットが購入できます。

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本展では、東京都写真美術館が所蔵する、映像史・写真史に関わる豊富な作品と資料を中心に、「覗き見る」ことを可能にした装置と、それによって作り出されたイメージ、そして「覗き見る」ことからイマジネーションを広げた、作家たちの多様な表現をご紹介します。
写真や映像を撮影する装置として発明されたカメラは、同時に覗き見る装置でもあるといえます。カメラの原型となったカメラ・オブスクラは、外界の景色を写し取るため、真っ暗な箱の一方の壁にピンホールを開けた装置で、その後ピンホールはレンズに代わり、箱は小型化され、携帯可能なサイズとなっていきます。このカメラ・オブスクラを反転させた構造を持ち、レンズ越しに絵を覗いて鑑賞する視覚装置がかつて存在しました。それらはピープショーと総称され、様々な形態が考案され、興行としても成立していきます。
覗き見る装置のヴァリエーションとしては、顕微鏡や望遠鏡に代表される光学機器や、ステレオスコープのような立体視のための器具、キネトスコープなどの動く絵を創り出す機械が挙げられます。こうした多種多様な装置の発明と流行により、まだ見ぬ新たなイメージの誕生が後押しされ、無数の表現が生み出されてきました。
覗き見る装置は、現代の私たちをとりまくメディア環境はもちろん、写真・映像で表現をおこなう際の形式的な前提をも形作ってきたと言えます。現代にも受け継がれる、「覗き見る」まなざしの系譜を、写真美術館のコレクションから探求します。

【TOPMUSEUM Podcast】
本展の見どころを、章ごとに担当学芸員がナビゲート。展覧会場で各エピソードを聴きながら鑑賞するのもおすすめです。Spotify、Apple Podcast、Google Podcastsからご視聴いただけます。

TOPMUSEUM Podcast#7-#11 展覧会みどころ解説トーク|【TOPコレクション 何が見える?】
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1 覗き見る愉しみ
覗き見る視覚装置の最初期の例として、17世紀末にヨーロッパで考案されたピープショーがありました。ピープショーは、1つ以上の覗き穴を持ち、箱のように閉ざされた空間を覗き穴越しに見ると、中の絵が立体的に見える視覚装置で、室内で楽しむもののほか、見世物師による興行用のものも存在しました。日本にも江戸時代に「覗き眼鏡」が伝わりますが、レンズを嵌め込んだ穴から、何らかの仕掛け(からくり)がなされた箱の中を覗き見る「のぞきからくり」が江戸から明治、大正期において庶民の娯楽として親しまれていました。

出品作品:カメラ・オブスクラ、ピープショー、眼鏡絵、覗き眼鏡、のぞきからくり


上:作家不詳《カメラ・オブスクラ(フランス製)》19世紀 木製
下:作家不詳《光学箱 (フランス製)》19世紀 木製

作家不詳《ペーパーピープショー 「1851年ロンドン万博水晶宮の内景」》
作家不詳《ペーパーピープショー「1851年ロンドン万博水晶宮の内景」(ドイツ製)》1851年 リトグラフに手彩色

作家不詳《眼鏡絵(ウェストミンスター寺院遠望)》
作家不詳《眼鏡絵(テムズ川にかかるウェストミンスター橋とロンドン市街の眺め)》1850年頃 エングレーヴィングに手彩色

2 観察する眼
16世紀末から17世紀初頭に発明された顕微鏡と望遠鏡は、どちらも覗き見ることで人間の視覚を飛躍的に拡張させる機能をもった装置といえます。また、観察する対象を客観的にまなざすカメラの眼は、肉眼では捉えることのできない一瞬の動きを切り取ることを可能にします。本章では、今から170年以上前にミクロの世界をダゲレオタイプで撮影したウィリアム・ベンジャミン・カーペンター《ウニのとげの断面》や、連続写真の実験に没頭した写真家エドワード・マイブリッジが1878年に公表した《馬と人間》などをご紹介します。

出品作家:ウィリアム・ベンジャミン・カーペンター、ロール・アルバン=ギヨー、エドワード・マイブリッジ、エティエンヌ=ジュール・マレー、ハロルド・ユージン・エジャートン

ウィリアム・ベンジャミン・カーペンター 《ウニのとげと断面》
ウィリアム・ベンジャミン・カーペンター 《ウニのとげの断面》1848-1849年 ダゲレオタイプ

エドワード・マイブリッジ《馬と人間》
エドワード・マイブリッジ《馬と人間》1878-79年 鶏卵紙

ハロルド・ユージン・エジャートン《りんごを貫く30口径の弾丸》
ハロルド・ユージン・エジャートン《りんごを貫く30口径の弾丸》1964年 ダイ・トランスファー・プリント ©2010 MIT. Courtesy of MIT Museum

3 立体的に見る
2枚の画または写真を、左右の目で別々に見ることによって立体感を得るステレオスコープ。最初の装置が1838年に発表された後、持ち運びが簡便な小型ビュワーが登場することで、ステレオスコープは大きな流行を生み、人々は写真に写された世界を現実さながらに立体的に見ることに熱中します。強い立体感と没入感をもたらすステレオビュワーは、その誕生から一世紀以上前に、同様に人々を夢中にさせた視覚装置、ピープショーと重なります。現代において、ヘッドマウンドディスプレイを装着しVRを体験する私たちの姿も、この歴史の連なりの中の一部となるのでしょう。

出品作品:ステレオスコープ(ビュワー)、ステレオカード

左:ネグレッティ&ザンブラ《クリスタル・パレス(ステレオビュワー)》1854年頃 右:作家不詳《スタンド付きブリュースター型ステレオビュワー》1870年頃
左:ネグレッティ&ザンブラ社《ステレオ・グラフォスコープ》1854年頃 木製
右:作家不詳《スタンド付きステレオスコープ》1870年頃 木製

作家不詳 《ステレオビュワーを覗く子ども》
作家不詳 《ステレオビュワーを覗く子ども》19世紀 エングレーヴィングに手彩色

下岡蓮杖《人形遊びをする子どもたち》
下岡蓮杖《人形遊びをする子どもたち》1866-1876年頃 鶏卵紙

4 動き出すイメージ
現在の映画の原型といえる映像装置は、リュミエール兄弟により1895年に一般公開されたシネマトグラフとされていますが、他にも19世紀には残像現象や錯覚を利用して、静止画像を動く絵へと変容させる多種多様な視覚装置が発明されます。残像や錯覚といった現象を生み出すには、視野を限り視線を固定することが効果的であるため、フェナキスティスコープ(1832年)、ゾートロープ(1834年)、プラクシノスコープ(1877年)、そして発明家トーマス・エジソンが1891年に開発した撮影装置キネトグラフと映写機キネトスコープなど、覗き見る構造を利用した多くの装置が誕生しました。

出品作品:ゾートロープ、プラクシノスコープ、フェナキスティスコープ、キノーラ、キネトスコープ(フィルム制作:石川亮)

《プラクシノスコープ》
エミール・レイノー《プラクシノスコープ・シアター(フランス製)》 19世紀 金属製

《フェナキスティナスコープ箱付き》
作家不詳《フェナキスティスコープ 箱付き(フランス製)》19世紀 紙製

(キネトスコープ レプリカ)
キネトスコープ レプリカ

5 「覗き見る」まなざしの先に
外界の景色を写し出すカメラ・オブスクラは、写し取った像を定着させ、レンズ越しに覗き見るカメラへと発展しました。カメラは覗き見る主体と対象を結び付け、親密な関係をもたらす一方、覗き見ることは、まなざしの不均衡を生む行為でもあり、愉しみの中にあやうさを孕みます。一人一台スマートフォンを持ち、日々カメラを向け合い、気づかないうちに被写体となるような環境に置かれる私たち。日常にあふれる「覗き見る」まなざしと、どのように向き合い、受け止め、まなざし返し、世界を切り取るという行為を再構成することができるのか。の名の作家たちの探求から、「覗き見る」ことの可能性と、その先にあるまなざしのあり方を考えます。

出品作家:奈良原一高、オノデラユキ、出光真子、伊藤隆介

奈良原一高 《インナー・フラワー:ばら・ティネケ》
奈良原一高 《インナー・フラワー:ばら・ティネケ》〈空〉より 1991年 ゼラチン・シルバー・プリント

出光真子《主婦の一日》
出光真子《主婦の一日》1977年 シングルチャンネル・ヴィデオ

オノデラユキ《No.1》〈Camera〉より
オノデラユキ《No.1》〈Camera〉より 1997年 ゼラチン・シルバー・プリント

伊藤隆介《オデッサの階段》
伊藤隆介《オデッサの階段》2006年 シングルチャンネル・ヴィデオ・インスタレーション

※所蔵の表記がない作品はすべて東京都写真美術館蔵

※事業は諸般の事情により変更することがございます。 あらかじめご了承ください。

主 催|東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都写真美術館

関連イベント

出品作家によるアーティストトーク
2023年9月9日(土) 14:00~15:30 石川亮(出品作家)、南俊輔(映像作家)  終了致しました
2023年10月15日(日) 14:00~15:30 伊藤隆介(出品作家)、岡村恵子(東京都現代美術館 学芸員 )  終了致しました
会場:東京都写真美術館1階スタジオ
参加費:無料
定員:各回とも40名(整理番号順入場/自由席)
※当日12時より1階総合受付にて整理券を配布します。
「覗き見る」メディアとイメージをめぐるレクチャー
2023年9月24日(日) 14:00~16:30  終了致しました
出演:草原真知子(メディアアート・視覚文化史研究者)、細馬宏通(早稲田大学教授)、橋本典久(プリミティブメディアアーティスト)
会場:東京都写真美術館1階ホール
参加費:無料
定員:190名(整理番号順入場/自由席)
※当日10時より1階総合受付にて整理券を配布します。
担当学芸員によるギャラリートーク(手話通訳付き)
2023年8月18日(金) 14:00~  終了致しました
2023年9月15日(金) 14:00~  終了致しました
2023年10月13日(金) 14:00~  終了致しました
担当学芸員によるギャラリートークを手話通訳付きで行います。どなたでもご参加いただけます。
会場|東京都写真美術館 3階展示室
参加費|無料(要チケット提示)
※当日有効の「TOPコレクション 何が見える?」展チケット(「年間パスポート2023」、「東京・ミュージアム ぐるっとパス」を含む)または展覧会無料対象の方は各種証明書等をご持参の上、3階展示室入口にお集まりください。
担当学芸員によるギャラリートーク
2023年7月21日(金) 14:00~  終了致しました
会場|東京都写真美術館 3階展示室
参加費|無料(要チケット提示)
※当日有効の「TOPコレクション 何が見える?」展チケット(「年間パスポート2023」、「東京・ミュージアム ぐるっとパス」を含む)または展覧会無料対象の方は各種証明書等をご持参の上、3階展示室入口にお集まりください。
TOPボランティアによる手作りアニメーションワークショップ【事前申込】
2023年7月29日(土) 11:00~12:00  終了致しました
2023年7月29日(土) 13:30~14:30  終了致しました
2023年7月29日(土) 15:30~16:30  終了致しました
2023年7月30日(日) 11:00~12:00  終了致しました
2023年7月30日(日) 13:30~14:30  終了致しました
2023年7月30日(日) 15:30~16:30
ペンで絵や図形など、好きなものを描いてオリジナルの [おどろき盤]を作ることができます。また東京都写真美術館オリジナルのデジタル教材「マジカループ」でタブレットを使って回転アニメーションを体験することもできます。
会場|東京都写真美術館1階スタジオ
参加費|無料
定員|各回とも20名 *事前申込制、先着順
体験時間|60分程度
対象|小学生以上(大人のみの参加も可能です) *小学2年生以下は必ず保護者とご参加下さい。小学3年生以上は子供のみの参加も可能です。保護者同伴で未就学児童の入場も可能です。

プログラムの詳細および申し込み方法はこちら

映画のはじまり体験ワークショップ【事前申込】※定員に達したため受付を終了しました
2023年8月19日(土) 11:00~12:30  終了致しました
2023年8月19日(土) 14:30~16:00  終了致しました
幻灯機やフィルム映写機など色々な映像装置を体験しながら、プラクシノスコープでアニメーション作りをおこないます。
講師|郷田真理子(フィルム技術者)
会場|東京都写真美術館1階スタジオ
参加費|無料
定員|各回とも20名 *事前申込制、先着順 ※定員に達したため受付を終了しました
体験時間|90分程度
対象|小学生以上(大人のみの参加も可能です) *小学2年生以下は必ず保護者とご参加下さい。小学3年生以上は子供のみの参加も可能です。保護者同伴で未就学児童の入場も可能です。

プログラムの詳細および申し込み方法はこちら

展覧会図録

TOPコレクション 何が見える?「覗き見る」まなざしの系譜
B5変型(W182mm×H240mm)、176ページ、2,200円(税込)発行元:東京都写真美術館
草原真知子(本展協力者、早稲田大学名誉教授) および担当学芸員によるテキスト、出品作品図版を掲載

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