
『ポルトガルの別れ』1986年
- 上映期間:2025年8月28日(木)~9月7日(日)
- 休映日:9月1日(月)
ペドロ・コスタの血と肉になった映画が扉を開く「白紙委任状(カルト・ブランシュ)」
■料金●当日券(座席指定券)
○ 一般 1,800円
○シニア(60歳以上)1,500円
○ 学生(大学・専門学校生)、高校生、中学生以下(3歳以上) 1,000円
○障害者手帳をお持ちの方(介護者2名まで)1,000円
※3歳未満のお子様に座席が必要な場合は料金(中学生以下)をいただきます。(保護者のお膝の上でのご鑑賞の場合は無料)
[各種割引] 以下の方は当日料金が割引になります。
○「ペドロ・コスタ インナーヴィジョンズ」展覧会のチケット提示(展覧会チケット1枚につき1回の割引)1,000円
○ 当館で開催の展覧会(「ペドロ・コスタ インナーヴィジョンズ」をのぞく)、映画の半券提示(半券1枚につき1回の割引) 1,500円
○ 当館年間パスポート提示(同伴者1名まで) 1,500円
○(公財)東京都歴史文化財団が管理する施設の友の会会員証・年間パスポート提示 1,500円
○ JRE CARD(クレジットカード)提示 1,500円
○ 当館が発行する映画優待割引券(支援会員)提示 1,500円
・全席指定 ・各回定員入替制/立ち見不可/事前予約不可
・ご鑑賞当日午前10:00より、その日の全ての上映回について受付を開始いたします。
・満席の場合、ご入場をお断りいたしますので、予めご了承ください。
・開場は各上映開始時間の10分前を予定しています。
上映作品|※全プログラム日本語字幕付き
1『トラス・オス・モンテス』Trás-os-Montes
ポルトガル北東部の山岳地帯、トラス・オス・モンテス。マノエル・ド・オリヴェイラ監督の『春の劇』のロケ地であるこの村は、ポルトガル建国以前の、ローマ時代から続く古き文化を色濃く残すエリアである。男たちは都会への出稼ぎで不在、女たちが家を守り、子どもたちは無邪気に自然と戯れている。村人たちの質素な日常を捉えているが、ドキュメンタリーではなく、この村に何世紀もの間に積み重なったさまざまな時代の歴史を、時空を超えた詩的な視点でとらえている点が特徴である。アントニオ・レイス監督は詩人や民俗学者でもあり、国立映画学校ではペドロ・コスタ監督を指導した。
デジタル化はシネマテッカ・ポルトゲーザが行った。
協力:シネマテッカ・ポルトゲーザ
監督:アントニオ・レイス、マルガリーダ・コルデイロ
出演:トラス・オス・モンテスの住民
[1976年/ポルトガル/カラー/DCP/111分]
2『ポルトガルの別れ』Um Adeus Português
1980年代半ば、老夫婦は次男と、植民地戦争で亡くなった長男の未亡人を訪ねるため、リスボンへ旅立つ。街の時間はゆっくりと流れ、まるで住民全員が一種の無気力に陥っているかのようだ。この現代と時を隔てるように、植民地戦争下のアフリカの深い森の中を、兵士たちが臆病にさまよう。再会は辛い過去と向き合うことになるが、蓄積した澱を少しずつ解いてもゆく。幾つもの不在によって構成された本作は、新たな未来を待ち望むポルトガル社会をも体現している。ロケ地はほぼポルトガルだが、一部のシーンはアフリカでも撮影された。ペドロ・コスタ監督は、本作の制作助手を務めた。
監督:ジョアン・ボテリョ
出演:マリア・カブラル、イザベル・デ・カストロ、フェルナンド・ヘイトール
[1986年/ポルトガル/カラー/DCP/83分]
3『田舎司祭の日記』Journal d'un curé de campagne
© 1950 STUDIOCANAL
カトリック系作家のジョルジュ・ベルナノスの同名小説の映画化。北フランスの田舎の村を最初の教区先として任命された若い司祭の、苦難の日々を描く。司祭は体調不良を抱えながらも、村人たちの悩みを聞き、布教と善行に励んでいた。しかし、司祭の純粋な信仰心は、世俗にまみれた村人たちには受け入れがたく、両者の間には次第に溝が生まれ、司祭は徐々に孤立し始め、神への信仰に苦悩する。そんなある日、司祭が倒れてしまい……。キャストにプロではない俳優を起用し、音楽やカメラの動きをそぎ落として撮影するロベール・ブレッソン監督独自の演出スタイル、“シネマトグラフ”を確立した初期の傑作。
監督:ロベール・ブレッソン
出演:クロード・レデュ、ジャン・リビエール、アルマン・ギベール
[1950年/フランス/モノクロ/DCP/115分]
4『星を持つ男』Stars in My Crown
1947年にジョー・デヴィッド・ブラウンが発表した『Stars in My Crown』という小説を元に製作された映画。1865年の南北戦争終結後から間もない頃、とある西部の小さな町に牧師グレイが布教と教会建設のためにやってくる。やがて、エリエットと結婚し、彼女の甥で身寄りのない少年ジョンを引き取る。映画の冒頭でこそ、荒くれ者たちをいさめるために二丁の拳銃を取り出すが、グレイの本当の武器は聖書である。腸チフスの流行や、雲母の鉱脈をめぐる住民間の土地争いなど、問題が次々と生じるが、グレイと妻は篤い信仰心と熱意で、町を復興させるために奮闘する。
監督:ジャック・ターナー
出演:ジョエル・マクリー、エレン・ドリュー、ディーン・ストックウェル
[1950年/アメリカ/モノクロ/Blu-ray/89分]
5『太陽』СОЛНЦЕ
© Nikola Film, Proline Film, Downtown Pict, Riforma Film, Mact Productions, Cinema Studio LENFILM
ロシアの鬼才アレクサンドル・ソクーロフ監督が、ヒトラー、レーニンに続き、“20世紀の権力者”を題材にして製作したシリーズの一作。1945年の敗戦までは、長らく現人神として崇められていた昭和天皇が、マッカーサーとの会見を経て、“人間宣言”を決断するまでの数日間の心の葛藤を、静謐な映像で描き出す。日本人が触れることはタブーな題材に正面から向き合った作品だが、社会派ドラマではなく、人間としての天皇の姿に焦点をあてている。日本での公開は危ぶまれたが2006年8月に封切られた。公開時、昭和天皇をイッセー尾形が演じることも含め、話題を呼んだ。
監督:アレクサンドル・ソクーロフ
出演:イッセー尾形、桃井かおり、佐野史郎
[2005年/ロシア・イタリア・フランス・スイス/カラー/DCP/110分]
6『H story』
©Dentsu/IMAGICA/WOWOW/TokyoTheatres
諏訪敦彦監督が、アラン・レネ監督の1959年の『ヒロシマ・モナムール』(原作はマルグリット・デュラス、日本公開時邦題『二十四時間の情事』)のリメイクを試みた作品。本番とメイキングが、1台のカメラで同時に撮影されている。主演のベアトリス・ダルは、デュラスのテクストを一言一句再現することが受け入れられず、撮影は中断。偶然現れた作家の町田康が、彼女を広島の町へ連れ出す。こうして、意図されたものとは異なる、新たな『二十四時間の情事』が生まれた。広島で生まれた監督が、敗戦から約50年後のヒロシマの町の記憶を、フィクションとドキュメンタリーを交差させながら捉え直す実験作。
監督:諏訪敦彦
出演:ベアトリス・ダル、町田康、馬野裕朗
[2001年/日本/カラー/35mm/111分]
7『真人間』You and Me
ノーマン・クラスナの原案にもとづき、フリッツ・ラングが監督した、渡米後の3作目の映画である。ニューヨークのとある百貨店を仕切るモーリス氏は、大勢の前科者をスタッフとして雇っていた。ジョーもそのひとりである。彼は同じ場所で働くヘレンに求婚し、ふたりは他の人には内緒で結婚する。しかし、ヘレンが抱えていたある秘密をジョーが知ってしまい、自暴自棄になったジョーは昔の悪い仲間たちと共に、百貨店に強盗に入ることに。しかし、そこで彼らを待ち構えていた人物とは……。ヘレンによる「いかに犯罪が割に会わないか」のシーンは必見。
監督:フリッツ・ラング
出演:シルヴィア・シドニー、ジョージ・ラフト
[1938年/アメリカ/カラー/Blu-ray/94分]
8『山羊座のもとに』Under Capricorn
原作は、ジョン・コルトンとマーガレット・リンデンの戯曲に基づいたヘレン・シンプソンの同名小説。1830年代のオーストラリアのシドニーが舞台で、男女4人の複雑な関係を描く。ある日、イギリス総督の甥チャールズは、一攫千金を狙って、流刑地として知られるシドニーを訪れる。そこで出会った、犯罪者あがりの有力者サム・フラスキーの妻は、かつて、チャールズの恋人だったヘンリエッタであることが判明する。しかし彼女はアルコール依存症になっていた。チャールズはヘンリエッタを救おうとするが、当然、サムは面白くない。そこに、サムのことが好きな家政婦のミリーがからみ、事態は思わぬ方向へ……。
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:イングリッド・バーグマン、ジョセフ・コットン
[1949年/イギリス/カラー/Blu-ray/117分]
9『パート2』Numéro deux
ジャン=リュック・ゴダールがグルノーブルに移り、アンヌ=マリー・ミエヴィルと創立した共同制作会社ソニマージュ社の、第2作。ふたつのパートに分かれており、前半では、ゴダール自身が映画を作るために必要なファイナンスについて議論し、後半では、フランスの地方都市にある公営集合団地に住むとある一家の、労働や家事、夫婦の性生活が映し出される。当時はまだ新しいメディアであったビデオを用い、フィルムとビデオをミックスさせて、ふたつの画面を同時に映し出すなど、テーマを多面的に表現するために特殊な手法で作られた実験作である。
監督:ジャン=リュック・ゴダール
出演:サンドリ―ヌ・バティステラ、ピエール・ル―ドレイ、ジャン=リュック・ゴダール
[1975年/フランス/カラー/Blu-ray/87分]
10『シチリア!』Sicilia!
シチリア出身の作家であるエリオ・ヴィットリ―ニの代表作『シチリアでの会話』を、ストローブ=ユイレが映像化した作品。ベートーベンの「弦楽四重奏曲第15番 作品132」をバックに、小説の一部分を序曲と6つの楽章に再構成して作られている。ミラノに住む主人公のシルヴェストロが、15年ぶりに、故郷シチリアのシラクサに住む母を訪ねる。その帰途上、彼は港ではオレンジ売り、列車では憲兵と出会い、会話する。実家では母から父や祖父の思い出を聞く。ファシズム批判の原作を、映像美と詩のようなセリフ回しで描いた抒情詩。
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
出演:ジャンニ・ブスカリーノ、ヴィットーリオ・ヴィニェッリ、アンジェロ・ヌガラ
[1998年/イタリア・フランス・スイス/モノクロ/35mm/66分]
11『あなたの微笑みはどこに隠れたの?』Onde jaz o teu sorriso?
ジャン=マリー・ストローブとダニエル・ユイレが、北フランスのル・フレノワ国立現代アート・スタジオで行った『シチリア!』の編集作業のワークショップを、6週間にわたって撮影したペドロ・コスタのドキュメンタリー。「現代の映画シリーズ:映画作家ストローブ=ユイレ」の製作後に残された膨大な映像素材を元に、長編映画として作られた。映画創作のプロセスのみならず、ストローブ=ユイレ夫婦のときには滑稽にさえみえる膨大な議論や感情のやりとりを通して、ふたりの物語や映画への愛が浮き彫りとなる。
監督:ペドロ・コスタ
出演:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
[2001/ポルトガル・フランス/カラー/35mm/104分]
※以下の日程で、出品作家による上映アフタートークを開催します。
8月31日(日) 13:00からの上映終了後 登壇者:ペドロ・コスタ
上映スケジュール(PDFはこちら[3,335kb])
★ペドロ・コスタによる上映アフタートークあり
フィルム提供・協力:アテネ・フランセ文化センター、コミュニティシネマセンター、神戸ファッション美術館、シネマテーカ・ポルトゲーザ、シネマヴェーラ渋谷、東風、パンドラ、マーメイドフィルム、Ar de Filmes、東京テアトル
関連イベント
- 作家とゲストによる対談
- 2025年8月29日(金) 18:30~20:30 登壇者:ペドロ・コスタ、長島有里枝(写真家)
2025年8月30日(土) 15:30~17:30 登壇者:ペドロ・コスタ、諏訪敦彦(映画監督、東京藝術大学教授)
会場|東京都写真美術館 1階ホール
定員|190名(整理番号順入場/自由席)
参加費|無料
※当日10:00より1階総合受付にて整理券を配布します
※英日通訳付き